フラッシュライトを数年間イジってみて、いまだに謎が多くて良く判らない存在、UFO・UMA的存在と思える『UltraFire』ですが、今回ご紹介する UltraFire M10 も CRELANT PT30 のクローン機でロゴ以外は PT30 とまったく同じ不思議ライトです。
PT30 も M10 も6~7年前の少々古めのフラッシュライトですが、セール価格で投げ売りされていたのと1.25インチ径のヘッドでありながらヘッドが大きく(長く)リフレクターも深そうに見えたので『飛び』を期待して購入しました。
開封後に点灯・各部のチェック。
一部『CRELANT』のまま修正されていないマニュアルを読みながら『???』と混乱しつつ(※詳細後述)『UltraFire』らしからぬ(…と言っては失礼か?)部分も兼ね備えていて、ざっと見た感じでは色々と楽しめそうな製品でありました。
どういう経緯で PT30 が M10 になったのか?…興味がないワケではないのですが、ソコを掘り下げていくと見てはイケない部分まで見えてきそうなので、取り敢えずソレは置いておいて、どんな風に改造するのが良いか?…も考えつつ UltraFire M10 を見ていきたいと思います。
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パッケージ
『白箱』ではなく『UltraFire』のロゴが箔押しされたハードBOXに納められていました。
古い製品だからなのか、それとも保管状態が良くなかったのか、外箱はかなり傷んでおり、傷だけでなくBOXの接着剤も剥がれている有様でしたが、中身のM10本体は傷もなく綺麗な状態でした。
内容物は、M10本体、ホルスター、英文マニュアル、予備Oリング、ランヤードとなっています。
付属のホルスターにはM10が入らず、サイズ的に2AAライト用のホルスターかと思われます…(^^;
仕様
◆UltraFire M10 / Specifications
– CREE XP-G2 R5 LED with 50,000 hours life span.
– Maximum output: 460 lumens(ANSI FL-1 standard)
– High efficient constant current circuit and regulated output-luminance
– Durable, custom-designed Microcontroller drive circuit
– Tactical tailcap high mode
– Working voltage: 2.7 V–8.4V DC
– Battery Types Supported: 1 x 18650 or 2 X CR123A
– Runtime: High output at 1.5 A: 460 lumens for 125 minutes.
– Mil. Spec. Type III hard anodized aircraft grade 6063-T6 aluminum alloy
– Color: Black
– Ergonomic grip with anti-roll design
– Tactical forward tail cap switch
– High performance aluminum smooth reflector with concentrated beam shot
– Waterproof: IPX-8 Standard
– Lens: Toughened & ultra-clear coated and anti-abrasive glass
– Dimensions: Length 137mm, Head Diameter 32mm, Body Diameter 25.4mm
– Weight: 115g excluding battery
– Accessories: Lanyard, spare o-ring
◆Features
– Specially designed for Police, Military, Law Enforcement, Self-defense, Hunting, Search & Rescue and Outdoorsman
– CREE New XP-G2 LED
– Max output of up to 460 lumens with an effective range of 132 meters
– New hybrid reflector specially designed for CREE LED, which allows for better beam quality, efficiency and throw capability
– Newly designed high efficiency broad voltage drive circuit maintains constant brightness and maximal runtime
– IPX-8 standard waterproof
ネットを漁ってもM10の正確な仕様は見つけられず、添付されたマニュアルに記載された仕様と、PT30の仕様を突き合わせてみたところ、両者の違いはサイズ表記と照射距離、その他数ヶ所の記述だけでした。(詳細は最後に…)
サイズ
ヘッド部分が長いので、一見すると大柄で重いライトのように見えますが、他の1.25インチ(≒32mm)ヘッドの製品と重量的には大差がなく『少し重いかな…』程度に収まっています。
ボディ
画像で見るとM10のヘッドは大きく(長く)アンバランスに見えますが、実物もやっぱり長いです(笑)
不格好と見るか?、それとも個性と捉えるかは人それぞれだと思いますが、初見で『放熱的に有利で飛ぶかも?』と真っ先に考えてしまった事はナイショにしてください。
ただ『長い』といっても、色々な製品と見比べてみると極端にヘッドが長いワケではなく、アンチロール部の位置(配置)や、放熱フィンの位置・形状がヘッドのボリューム感に影響を与えているのだと思います。
好き・嫌いは別にして、個人的には、M10のように『ヘッドォォォ!』的に主張するデザインも全然アリ…だと思います。
ツヤ消しブラックの表面仕上げ、ローレットの加工とも非常に綺麗です。
カタログ(取説)の記述には『HA-Ⅲ』とありますが、性能や加工に差が無いのに価格差のある製品(この場合は安価な製品)は、電着仕上げのコストで価格差を吸収・相殺することも多いので実際にHA-Ⅲかどうかは不明です。
まぁ、どのグレードの仕上げがなされていても長期間使用していれば必ずダメージが出てくるモノなので、正直『どっちでもイイかな♪』と思っています。
M10はヘッド、グリップ、リアの3ピース構成です。
ヘッド部分は更に分割できそうですが、ベゼルパーツの部分は接着固定されています。
ヘッド/LED
SMO(ミラー)リフレクターにXP-G2の組み合わせ。
今なら10WクラスのLEDやXHP50.2を積んでいても不思議ではないヘッドサイズですが、過熱防止のリミッター無しで最大出力での長時間点灯を可能とするには XP-G2など5ワットクラスのLED が限界で、更に安全マージンを考えると XP-E/E2 などの3ワットクラスが適している…ような気がします。
熱源となるLEDの位置に放熱フィンが設けられ、転がり防止のアンチロールも兼ねています。
どれほどの放熱効果があるのかは微妙ですが、リフレクターはヘッドの先端からフィンの位置ぐらいまでの深さがあります。
ヘッドとのジョイント部分は無塗装でネジは角ネジ加工されています。
スイッチ
スイッチはフォワードクリック式で間欠点灯が可能です。
テールエンドのランヤードリングを設けるための構造により、スイッチトップの高さが低くなっていますが、少し親指を曲げる必要があるものの、割と普通に操作可能です。
個人的には、この位置にランヤードを取り付けると使い辛いのでリングを外した状態で使いたいのですが、リング無しでは間の抜けたシルエットになるのが悩み処です。
リアも1インチ径なら目隠しを兼ねてスイッチバックを装着…と考え、実際に試したのですが、M10側のネジ径が微妙に大きくてスイッチバックが装着できませんでした…orz
ヘッド側と同じくリアのネジも角ネジとなっていますが、他の製品とリアパーツの互換性はゼロなのでリプレースが出来ず痛し痒し…という感じです。
ちなみにM10は、グリップ端が内側のロックリングに接触して通電する構造ですが、ロックリングは CONVOY や JAXMAN と同様に逆ネジとなっていて、リアを強く締め込んでもロックリングが緩まない構造になっています。
電池
M10の動作電圧は 2.8 – 8.4V なので、18650、2×CR123A、2×16340(この頃はまだ18350が一般的ではなかった) が使える事になりますが、当面は18650でのみ運用するつもりです。
搭載LEDがXP-G2なのでIMRのようなハイ・ドレイン対応電池も必要としませんが、ICRとIMRを使い比べてみると、なんとなくIMRの方が安定した出力(明るさ)が得られている…ような気がします。
モード
通常モードは3モード、特殊モードとしてストロボを備えています。
消灯時、スイッチを半押しする度に【Hi】→【Med】→【Low】→【Strobe】→【Hi】…のサイクルでモードが移行、全押しするとモード確定、常時点灯となります。
モードメモリは備えておらず、常に【Hi】でスタートする仕様はタクティカルらしくて良いのですが、消灯からデフォルトスタートの【Hi】にリセットされるまで3秒以上必要なのが残念です。
デジカメを通して見ても【Med】や【Low】でフリッカーの発生は認められませんでした。
添付のマニュアルには【Hi】の光束値しか記載されておらず、最大輝度(カンデラ値)は 25,600cd 、照射距離は 320m となっていますが、PT30の『仕様』では照射距離が『132m』と記載されています。
XP-G2をフルドライブすれば460ルーメンの光束値も不思議ではないのですが、カンデラ値と飛距離については『???』という感じです。
照射の項で改めてツッコミますが(笑)こういう辺りが Ultra で Fire なのかなと思ってみたり…。
照射
今回はこの5本に NITECORE MT2C を加えて照射比較。
MT2Cは発売時期が同じ頃のXP-G2搭載機であり、輝度や照射距離の比較・検証対象として特別に友情出演していただきました。
BlitzWolf BW-T1 は XP-G3 搭載、P60互換機は、XP-G2 と XP-L Hiで、この3本はヘッドサイズがほぼ同じです。X0は XM-L2ですが、ヘッド径が少し大きくリフレクターが深いので飛び具合の比較として加えてみました。
水平照射
配光/光色/演色
LED電球
UltraFire M10
NITEORE MT2C
BlitzWolf BW-T1
P60 LED bulb XP-G2 [NW]
P60 LED bulb XP-L Hi [CW]
SKILHUNT X0
屋外照射
白昼/軸線(立木まで67m)
UltraFire M10
NITEORE MT2C
BlitzWolf BW-T1
P60 LED bulb XP-G2 [NW]
P60 LED bulb XP-L Hi [CW]
SKILHUNT X0
最大輝度が25,600cd であるならば、飛距離は √(cd÷0.25) で『320m』となるのですが、実際に照射してみると約70m先のフェンスにやっと届いているかな?…という程度で、とても『320m』も飛ぶような感じはしません。
ならば『132m』が正解なのだろう…となるのですが、先のMT2Cの光束値・輝度・照射距離と比較すると別の矛盾が…(ーー;)
『仕様』の照射距離の数値『132m』から逆算するとカンデラ値は『4,356cd』となりますが、M10よりもヘッド径が小さく光束値の低いMT2Cでさえ 7,100cd/168m なので、M10の光束値やヘッド径からすると、やはりマニュアルの数値には疑問が残ります。
『UltraFireブランドの製品でナニをムキになっているのか?』と笑われそうですが、M10の元ネタ(?)となる CRELANT PT30 の性能数値にも矛盾や疑問が出て来ます。(現在、CRELANTはダイビングライトをメインに販売しているようですね…)
『飛び』に関係する以外の部分を見てみると、同じ1.25インチヘッドのP60互換機よりも広角照射で、リフレクターが深いだけに中心光が強め、タクティカル風味の配光になっています。
色温度の表記はありませんが、青被り寸前の色味なので、6500K、もしくはそれ以上の色温度だと思います。
輝度・照射距離の数値には疑問が残りますが、XP-L Hi に引けを取らないピンスポット配光で、きっちり調整してやれば『更に使える』ライトになると思います。
まとめ
マニュアルに記載された数値だけでなく、屋外照射してみた結果も『???』となったので、念の為テール電流を測ってみたところ…
・【Hi】:950mA
・【Med】:400mA
・【Low】:40mA
…と、【Hi】の電流値が少ないことが判明しました。(マニュアルには1.5Aとの記載)
テール電流=駆動電流ではないにしても 1.0A 未満で460ルーメンというのは有り得ないので、長期保管による接点の酸化か、製造時から基板の接触が悪いのかも?…って事で、接点クリーニングと改造の予行演習・事前調査を兼ねてバラしてみました。
ショート防止と思われる白いPOM樹脂のカバーは、ただハメ込んであるだけのようでしたので、中央のスプリングを押しながら少し樹脂カバーを持ち上げてやったら簡単に外れました。
制御基板を固定するロックリングを外すと基板がフリーになるので、各部の接点を接点復活剤でクリーニング、制御基板が『φ21mm』というマイナーな直径であることを確認しつつ(笑)、元に戻して再度テール電流を計測しました。
・【Hi】:1,600~1,700mA
・【Med】:500mA
・【Low】:40mA
今度は過電流である事が判明(笑)
クリーニング後に屋外照射は行っていませんが、屋内でも光束値がアップしている事がハッキリ判るほどなので、本来の『460ルーメン』程度は出ていると思います。
クリーニングに使用した綿棒がまっ黒になったので、接点部分の酸化が進行していたのは間違いないのですが、製造・組み立ての時点で接触が甘かった可能性も否定できません。
ただ、過電流状態で常用するのは製品寿命、特にLEDの寿命を縮める事になるので、LEDを XP-G2 から10ワットクラスの物に交換するつもりです。
LED、制御基板のどちらを交換するにしても、接着固定されているベゼルパーツを外さなければならないのですが、『…ったく、しょうがないナァ…イジる楽しみが増えちゃったじゃないか♪(*´ω`*)』と、よくワカラン精神状態になっています。(笑)
総評としては、仕様数値と実際の照射に乖離・矛盾があったものの、本体の造りは確かでコンセプトも明確な良いライトだと思います。
発売当初の価格は、UltraFireでありながら$40弱だった記憶があるのですが、各部の造作を見ていくと、あながち無茶な価格ではなかったかな?…とも思えます。
期せずして先のMT2Cと同時期の製品となりますが、M10に限らず古い製品は、購入後に再調整や完全オーバーホールが必要になることも念頭に置きつつ、掘り出しモノがあればまた購入したいと思います(笑)