フラッシュライトのメンテナンス

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あの日から4年が経ちました。
『もう4年』 なのか 『まだ4年』 なのか・・・人によって感じ方は様々だと思います。

ただ、被災地はまだまだ復興したとは言い難く、我々に出来る事で支援を続けたいと思います。

自分は過去、長期に渡って電球マグライトを使っていましたが、3.11の震災を期にLEDフラッシュライトに興味を持ち今日に至っています。

フラッシュライト

光源であるLEDの寿命がキセノン球より遥かに長いので、ついついメンテナンスを怠りがちになりますが、イザという時に使えない、役に立たないでは意味が無いので、今回は自分が普段行っているフラッシュライトのメンテナンス方法やポイントなどを紹介します。

メンテナンスツール

フラッシュライトのメンテナンス道具

自分がフラッシュライトの手入れに使っている主な道具はこんな感じです。

電気装置用防錆・接点復活材(CRC 2-26)

一番小さな108mlのスプレー缶で普通のホームセンターでも取り扱っているハズです。
フラッシュライトも電気で動くモノであり、電気的な接点をクリーニングするのに重宝します。
容量的に5-56と比べてやや高価ですが、フラッシュライトだけをメンテするだけならコレ1本で多分一生分の量だと思います。

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CRC 2-26 は、フラッシュライトの接点だけでなく、すべての電気的な接点に使用できます。
身近なところでは、充電器や携帯電話、スマホ、電池の端子・接点の汚れや酸化皮膜をクリーニングするのにも使えるので、1本あると何かと便利な製品のひとつです。

電極に金属独特の光沢が無くなったら油脂汚れや酸化被膜(通称:サビ)が表面に形成されていると考えられますが、酸化被膜は電池本来のパフォーマンスの低下や電池の劣化を早めてしまう要因にもなります。(※サビといえば鉄部に発生する赤サビを連想しますが、真鍮や胴、アルミにもサビは発生します)

『最近、電池の持ちが悪くなったなぁ・・・』 と感じた場合、電池の劣化(化学反応の鈍化)により容量が減少していることも考えられますが、接点不良により電池が完全に充電されておらず、その結果として電池が長持ちしない…って事も考えられます。(※経験談→)

これは、酸化被膜の影響で抵抗値が変わり、充電器側で正確な電池電圧を検出できないまま、充電池本来の電圧に達する前に充電を停止してしまうことから起こる不具合です。(当然、充電時間にも影響します)

実際に買って間もないデジカメのバッテリーがすぐに切れるので、ダメ元で接点クリーニングしたら見事に復活しましたw

特にエネループなどのNi-MH充電池は、中途半端な充放電を繰り返していると電池の寿命を縮めることにも繋がるので、時々は接点復活剤で充電器の接点と電池の電極(+/-端子)をクリーニングすると良いでしょう。空気中の微少な湿気でも金属の酸化は進行するので、長期間使用していない機器は勿論ですが、毎日使用している機器でも油断せずに日頃のメンテナンスをお忘れなく…。

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キムワイプ

汚れや余分なオイルを拭き取るのにウエスとして使用します。
化学の実験とかで使った事がある方も多いと思いますがティッシュペーパーのように紙の繊維が残らないのでハンダのフラックスを洗浄するのにも使っています。(無ければ普通のティッシュでも可)

リチウムグリス

ゴムやシリコン製のOリングに塗布します。

メンテナンス シリコングリス/リチウムグリス
メンテナンス リチウムグリス

以前は安価な中国製シリコングリス(NEXTROCH)を使っていましたが、今はこのAZリチウムグリスを使っています。

シリコングリスより柔らかく《伸び》が良くて滑らか、2年程使い続けていますがゴム素材のパーツやシリコンを侵す事も無く特に問題は出ていません。少しグリス特有の匂いがしますがソレさえ気にならなければお薦めです。

ホームセンターで販売されていた内容量:80gのモノで価格は¥200~250くらいだったと思います。同じメーカー【AZ】のシリコングリスが¥1,300~1,500で販売されているのでかなり安価なグリスです。(80gでもフラッシュライトのメンテだけなら量的には一生分の内容量です)

一部の通販でパッケージに《耐熱リチウムグリス》と謳ったモノが高値で販売されていますが、ホムセンで売ってるリチウムグリスと中身は殆ど同じです。(そもそもOリングの劣化防止・防水性能の向上が主目的なので耐熱性など必要有りません)

使用上の注意点は、夏場など気温の高い季節にはシリコングリスより軟化(液化)しやすいので必要以上に大量に塗布するとオイリーなフラッシュライトになってしまうので要注意です。逆に気温が低くても硬化し難いのでヘッドを廻してモード変更するライトにはうってつけのグリスです。

色々な鉱物を配合した高価なグリスも販売されていますが《高価=良い》とは限らず、製品によってはゴム製パーツとの相性が悪く劣化を促進してしまうモノも有るので 『グリス 種類 特徴』 などのキーワードで検索し、前もってグリスの特性を確認しておくのが良いと思います。

同じシリコングリスでも《ちょう度》を示す数値が大きい(柔らかい)シリコングリスは非常に高価です。近頃はメーカー品のフラッシュライトでもコストカットの関係からか、工場出荷の状態でシリコングリスが使われている製品は少ないように感じます。

ブラシ

使い古しの歯ブラシで可。
ボディの表面やネジ山に固着した汚れを取るのに使います。

ピンセット

ロックリングを外したりネジの溝をクリーニングするのに便利です。

通常、ロックリングを外すにはピンセットで事足りるのですが、材の肉厚が薄いピンセットだとハイテンションで締めてある場合は歯が立たず、リングを締める場合にしっかりと固定出来ず電池交換の時に緩んだり、接触不良を起こして点灯しなくなってしまう事が有ります。(特にGENTOS製品は分解防止の為か各部を鬼のように締め込む傾向アリ)

ニードルノーズ・プライヤー
ニードルノーズ・プライヤー

肉厚のしっかりしたピンセットが手に入らない、または肉厚でもピンセットでは歯が立たない場合には先端が丸細のニードルノーズ・プライヤーを使った方が作業効率が上がります。(※画像の物は100均のダイソーで購入)

綿棒

細部の清掃、基板接点(パターン)をクリーニングするのに使用します。

爪楊枝

細部の清掃、グリスアップやOリングを外すのに使います。

爪楊枝

爪楊枝の先端をカッターなどでヘラ状に削っておくと何かと便利です。

接点

フラッシュライトの接点

フラッシュライトでどの部分が電気的な接点になるか?
マニアの方ならご存知かと思いますが《塗装されていない部分は電気的な接点》だと考えて良いかと思います。

一例として SOLARFORCE L2T を使って接点クリーニングとOリングのグリスアップの説明をします。

リアキャップ

一番判りやすいのはリアキャップとスイッチ廻りで、L2Tはボディ・リア部のネジ山が無塗装でリアキャップ内部のネジとロックリングを介して通電する構造になっています。(アルミやステンなど金属製のライトはボディにも電流が流れています)

同じSOLARFORCEでも、P1dのようにネジ山に絶縁塗装が施されている機種もありますが、そうした機種はボディのリアエッジ部分が無塗装でロックリングと直接接触して通電する仕組みになっています。

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先ずはリアスイッチを分解して接点をクリーニングします。

ロックリングの外し方

ロックリングに窪みが2つ(矢印部分)有るので、ピンセットやニードルノーズ・プライヤーを窪みに押し当てて反時計回りに廻すとリングが緩み外れます。

《追記》Convoy S2+ など、一部の製品にはロックリングが逆ネジ(時計廻りに回すと緩むネジ)となっている場合があるので、通常方向に回して緩まない場合は逆に回してみてください。

スイッチ部品

ロックリングが外れれば全てのスイッチ部品が取り出せるハズです。

スイッチブーツ

スイッチブーツは消耗品なので、長年使っていると劣化による破損(主に断裂)が起こります。

破損している部分からライト内部に水が侵入し、最悪の場合ショートしてライトや電池の故障の原因となるのでメンテのついでにチェックするのが良いと思います。

スイッチ/メインパーツ

スイッチ部分の主な電気的接点はスイッチ基板のパターン、スプリング、ロックリングです。

スイッチ基板とロックリングの間に異物が挟まったりしていると接触不良を起こすのでパターンとリング、双方をクリーニングします。

ライトの接点クリーニング

クリーニング方法は少量の接点復活剤を染みこませた綿棒で軽く擦って汚れを落とします

スイッチ/クリーニングNG

間違っても基板に接点復活剤を直接噴射しないで下さい。
※スイッチパーツの中に剤が侵入すると故障の原因になりますし、液だまりから発生したガスがフラッシュライト内に充満する恐れがあり大変危険です。

ライトのスイッチ/接点チェック

ついでにスプリングのハンダ分部にクラック(ひび割れ)が発生していないか、スプリングが脱落しそうになっていないかをチェックします。

リア・スプリングの取付部には強い捻れのチカラが掛かるので、ハンダが不完全だとスプリングが脱落し内部でショートを起こしたりします。(ハンダ不良の過去記事:PENTAX O-RC1 / 電池交換を参照)

ライトのスイッチ/接点クリーニング

リアキャップ内のネジ部も接点となるので綿棒やウエスでクリーニングします。

ライトのスイッチ

全ての接点をクリーニングしたら分解した時と逆の手順で組み立てます。

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次にボディ側の接点クリーニングです。

ライトのボディ/メンテナンス
ライトのボディ/接点クリーニング

クリーニングを始める前にOリングやクリップを全て外しますが、Oリングの劣化(硬化)が進行していると外す時に切れてしまう事があります。

Oリングが無くてもライトは点灯しますが、防水性能が著しく低下するので同じサイズの新しいOリングに付け替えます。

メーカー品のフラッシュライトには大抵予備Oリングが付属してきますが、そうでない場合は同じサイズのOリングが国内通販では入手し辛いのが実状です。

ポピュラーなサイズのOリングならばかんてら堂さんからも購入できますが、1AAAなどに使われる小径のモノや特殊なサイズのOリングは海外通販を利用するのが早道だったりします。

腕時計のシールに使うOリングが流用できる場合もありますが、腕時計用は線径が細いモノが多いので、転用が可能かよく調べる必要があります。(時計用OリングはガラスフィルターのOリングとして使うには便利)

外したOリングに付着したグリスやゴミは拭き取っておきますが、切れていなくてもゴムの弾力(復元力)が低下していたり、Oリングの表面にヒビ割れやササクレが発生していたら、迷わず交換する事をお薦めします。

接点クリーニング
接点クリーニング

ネジ部分に注油していなくても液化したグリスが付着し、酸化したアルミ粉と混ざって汚れているのでウエスで拭き取ります。神経質に爪楊枝でネジの溝までクリーニングしなくても大丈夫ですが、どうせ掃除するなら・・・。

同様にヘッド側のネジ部もクリーニングします。

ヘッド側接点クリーニング
ヘッド側接点クリーニング

P60互換バルブのライトは、ヘッド側の内部がバルブ(スプリング部分)との電気的な接点となります。

接点クリーニング

全ての接点をクリーニングしたら外したOリングを取り付けますが、ボディ側のOリングをセットする部分に予め少量のグリスを塗っておくと後の作業が楽になります。

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どのライトも基本的に無塗装部分が電気的接点となります。

ThruNite Neutron 2C V2
Neutron 2C V2 接点
ThruNite Neutron 2C V2 接点クリーニング
ThruNite Neutron 2C V2 接点クリーニング

ThruNite Neutron 2C V2 は、各パーツのエッジ部分とエッジとの接点が無塗装となっているのでこの部分を重点的にクリーニングします。

基板接点クリーニング

回路基板(PCB)の接点(パターン)や【+】接点もスイッチ基板と同様に、少量の接点復活剤を染みこませた綿棒で軽く擦って汚れを落とします。

基板接点クリーニング/NG方法

間違っても接点復活剤を直接噴射しないで下さい!確実に故障します。

※CRC 2-26 の《使用上の注意》にも有りますが、液だまりから引火性のガスが発生する可能性が有るので、特にフラッシュライトの様に密閉構造の製品に使用する場合は用量に充分注意して下さい。

GENTOS パトリオ6
GENTOS パトリオ6

GENTOSのパトリオ6はリア部分のネジ山に絶縁塗装が施されているので 2C V2 と同様に、ボディのエッジ部分とリアキャップ内のロックリング部分をクリーニングします。(Oリングが汚れていますな・・・)

グリスアップ

メンテナンスグリスの塗布

グリスはOリング部分のみに少量のグリスを塗布します。

メンテナンスグリスの塗布
グリスの塗布

爪楊枝の先端をヘラ状にカットしたのはこの為で、Oリングの表と裏に薄くグリスを引くのに便利です。

グリスアップのポイントは、《出来る限りOリング部分だけに注油しネジ山部分にはグリスを塗らない》です。

特に無塗装のネジ部分にはグリスを塗りたくなりますが(笑)そこは我慢・・・。

余程大量のグリスを塗らない限りは、塗布したグリスで通電が遮断される事は有りませんが、高温時に液化した余分なグリスがPCB内に浸透すると面倒な事になりますし、外まで染み出ると先述の通りオイリーなライトになってしまいます。

酸化防止の為にネジ部分に注油するならば、接点復活材を薄く塗る程度に留めた方が後々涙目にならなくて済むかと思います。

グリスの塗布

グリスの量もホンの少しだけでOKです。
リアキャップやヘッドの内側がOリングと接触した時に付着したグリスが自然に馴染むので神経質にOリングの全てに均一に塗布する必要は有りません。(ゴミなどの異物は水密性能を低下させるので神経質になって下さい)

ライト外装の汚れは、中性洗剤などで丸ごと洗浄するとローレット部分に溜まった手垢が落ちて新品の様にキレイになります。(但し分解出来ればの条件付き)

エアブロー

フィルターがガラス製ならばクリーニング・クロスなどで汚れを拭き取れば良いのですが樹脂製のレンズだと傷が付く場合が有るのでエアブロアで埃を吹き飛ばす程度に留めておきます。

通常、フィルター内部まで埃が侵入する事は無いのでヘッド部分を分解して清掃する必要は無いと思います。

不用意にヘッド部分を分解すると、ガラスフィルターやリフレクタに埃が付着するので必要無ければ分解はしない方が良いと思います。(P60互換ライトは仕方無いですが・・・)

特にリフレクタに埃が付着するとなかなかキレイにならず、エアブローでも埃が落ちない、若しくは指紋が附着したりした場合は高圧洗浄機や超音波洗浄機で洗うハメになります。(それでも乾燥後に水滴痕が残ったりして非常に厄介)

リフ清掃の注意

ゴミが取れないからといってリフを直接ティッシュや布で拭くのは厳禁です。

リフレクタの表面は非常にデリケートで、どんなに柔らかい紙や布を使っても1000%傷が付きます

クリーンルームで作業出来ないならばヘッドは分解しない方が無難です。(※経験談)

まとめ

ライトのメンテナンス完了

クリーニングしただけでライトが劇的に明るくなる事は無いと思いますが・・・それでも明るくなった気がするから不思議です。

メンテナンスする事で製品に対する愛着も沸きますし、非常時・災害時の対応・心構えの再確認にもなります。更にはフラッシュライトの構造を知る事で接触不良程度の不具合なら自力での修理・調整も出来るようになり、イザって時に慌てる事態も回避できるかと思います。

ライトは災害時には身の安全を確保する為の重要なツールの一つなので末永く、大切に使いたいモノです。ライトのメンテナンスのついでに防災備品の再チェックを行う良い機会ではないでしょうか?

日本という国で生活する限り、自然災害(特に地震)からは逃れられないですし、誰の身にも起こり得る事です。自分自身のみならず大切な人を守る為にも3.11の経験を将来に活かさなくてはならないと思います。

付録

フラッシュライト本体のメンテも大事ですが電池のチェックもどうかお忘れなく。

備蓄している乾電池の使用期限が過ぎていないかチェックする事も大切ですし、エネループなどのNi-MH充電池は完全放電しないまま充放電を繰り返しているとメモリー効果で蓄電容量が下がってしまいます

Ni-MH充電池は0.85V~0.9Vぐらいまで完全放電させると元の容量に回復するので、今回取り上げたパトリオ6でさえも点灯しなくなるまで使い切って(放電させて)再充電する作業をたまには行うのが良いかと思います。

完全放電の頻度は使用状況に依りますが、数ヶ月使わない状態でエネループを保管しているならば、そのまま《継ぎ足し充電》せずに一度完全放電させ電池を再活性化させてから再充電した方が電池本来の性能を引き出せるかと思います。
 

カテゴリー: Accessories, フラッシュライト, 防犯/防災・減災 タグ: , , パーマリンク

フラッシュライトのメンテナンス への2件のフィードバック

  1. のコメント:

    初めまして。
    記事を読ませて頂きました。
    教えて頂きたいのですが、ライトのスイッチブーツはどこで買えますでしょうか?
    記事にあるように私のライトも断裂しておりまして交換したいのですが、いくら調べても分かりませんでした。
    宜しくお願い致します。

    • doorman のコメント:

      こんにちは♪
      ご覧頂き感謝です。

      スイッチブーツは【かんてら堂】さんURL:https://www.kanterado.com/ で購入出来ましたが、今はサイトにアクセスしようとするとブラウザが【安全な接続ではありません】としてブロックされてアクセスできませんね・・・(´Д` )

      どちらにしろ、スイッチブーツのサイズによっては国内通販で入手できないモノもありますし種類も少ないので、スイッチブーツに限らずフラッシュライトのパーツは海外通販で入手しています。

      GENTOSなどの国内メーカー品であれば、メーカーのサポート窓口に相談してみるのが早道だと思います。
      私自身は頼んだ事は無いのですが、大抵はパーツ代+送料のみで送付して貰えるみたいですネ。。。

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