7年目の3.11…
徐々に復興している地域もあれば、諸事情により(なんだか軽い言葉…)復興にはほど遠い地域もありで、踏み込んだ報道、実状を目にする度に複雑な思いが込み上げてきます。
それでも、例え一歩でも前に進まなければならないのですが、7年目の今年は、改めて【防災とライト】について考えてみたいと思います。
どんなライトがいいの?
普段、複数本のライトを持ち歩かない方、ライトはスマホで充分と考えている方など、ライトに詳しくない普通の方に防災用として薦めるならヘッドライトを薦めます。
理想としては、乾電池駆動で子供でも扱える出来るだけシンプルなヘッドライトを一家に一台、是非とも用意して欲しいと思います。
ヘッドライトは必ず視線の方向を照らす事になるので、危険箇所の早期発見・回避にもつながりますし、頭から外して床に置いても簡単に転がることがなく、半透明のビニール袋を被せればランタン替わりにもなるので、ヘッドライトは実に防災・減災向きのライトと言えます。
ところが、防災グッズの中に必ずと言っていいほど含まれるライト(懐中電灯)ですが、TV等で紹介される防災グッズ一覧のイラストに描かれているのは昔ながらの懐中電灯(ハンドライト)の絵ばかりで、残念ながらヘッドライトが描かれているのを見たことがありません。
【防災セット】と銘打って販売されている商品の中にもヘッドライトが同梱されているものをdoormanは見た事がありません。
もちろんハンドライトでもライトが有るか無いかで状況が一変しますし、災害時にはハンドライトも充分に役に立ちますが、両手がフリーになるヘッドライトの機動性は今更力説するまでもないかと思いますし、避難時のみならず、捜索や後片付けの時にもヘッドライトは重宝します。(実際に消防士やレスキュー隊員の方々が、なぜヘッドライトを装着しているのか考えてみてください)
普通の懐中電灯にも馴染みがないのに、ヘッドライトなんて大袈裟過ぎないか?・・・と、言われそうで、実際に自分もヘッドライトを使うまではそう思っていました。
先の防災グッズのイラストや商品にヘッドライトが含まれていないのも、それだけ世間一般にヘッドライトが浸透していない証しかと思います。
■参考:消防庁 防災マニュアル – 総務省・消防庁
防災向きのヘッドライトとは?
ヘッドライトもハンドライトと同様に百花繚乱、それこそピンからキリまで多種多様な製品が販売され、どれが良いのか?どんな製品を選べば良いか迷ってしまうかと思います。
使用者のスキルや用途によって色々な意見があるかとは思いますが、ここでは、【一般家庭の防災用途】に絞って考えてみたいと思います。
1.シンプルであること
シンプルの定義も人によって様々かとは思いますが、誰でも簡単・手軽に扱えるというのを最優先に考えると、単純にスイッチを押したらライトが点く、消える…というのが製品選びの基本になると思います。
購入したらまず説明書を読んで基本操作を理解しておく事は重要なのですが、説明書の内容をすべて暗記するのは難しいですし、説明書が無くても簡単に操作できれば、それが一番だと思います。
マニアな方々にはお馴染みである【スイッチの長押し】という操作ですが、これが多機能なライトに慣れていない人にとっては思いもつかない操作方法のようで、操作方法を習得するのに時間を必要とするのを幾度となく見てきました。
電池の消費を抑える為にも【Hi】/【Low】の調整が可能なヘッドライトが理想なのですが、モードの変更という操作が加わることで上手く操作できず、最大光量のまま点灯し続け、あっと言う間に電池切れ…という事態に陥ってしまう事も有り得ます。
もし、光量切り替え機能を使いこなす自信が無いのならば、単モードのヘッドライトでも全然OKです。
特に子供や高齢者が使用するのならば、スイッチを押したらライトが点く、消える…という、極めてシンプルな製品の方がイザという時にきっと役に立つハズです。
センサーを搭載しハンズフリーでON/OFFできるヘッドライトもありますが、障害物などで意図せず消灯する事も発生し得る事を考えると、自分の意志でコントロールできる製品が防災向きかと思います。
2.乾電池駆動
ヘッドライトの中にも電源にLi-ion充電池を使い、本体に micro-USB ポートを装備してPCやモバイルバッテリーから充電可能なヘッドライト製品が多数発売されていますが、防災・減災を主要用途と考えると、電源確保の観点から単三乾電池や単四乾電池駆動の製品が適しているかと思います。
100%電源が確保できる、もしくは、短時間駆動させるだけであれば充電式でも良いのですが、災害時はそうもいかないかと思います。モバイルバッテリーを携行していても、その電力は消費電力の大きい情報通信端末用に温存しておくのが得策かと思います。
電池の使用本数は単四電池仕様なら2本か3本、単三電池仕様なら1本か2本を目安に選ぶと重量が抑えられ、装着時の負担も軽くなります。
少々割高になりますが、アルカリ乾電池よりも電池重量が軽く、長期保存に向いている1.5Vの単三・単四形リチウム乾電池を備蓄しておくのも良いと思います。
3.明るさは?
防災・減災目的とするならば、個人的には500ルーメンや1,000ルーメンなどの高出力製品は必要無いと考えます。
無論、明るければそれだけ照射範囲が広くなり、視界の確保にもつながるのですが、“明るさ”は、先の“シンプル”と“電源”に大きく関係する要素であり、高出力製品はモードの変更操作が必須となり、単三・単四電池駆動ではない充電池仕様の製品が殆どです。
中には長期保存に適している3.0vのCR123Aを使う機種もありますが、電池の入手性やモード変更操作が必須となるので、防災・減災用として一般家庭に常備するには向かないと思います。
具体的な明るさ(ルーメン値)は、歩く速さや路面の状態、天候、使用者の年齢・感覚、ライトの集光度・配光によって使用感が左右されるので難しいのですが、悪天候でなければ、リフレクターを使ってLED光を集光しているライトであれば50~100ルーメン、TIRレンズなどを使って光をコントロールしているタイプならば100~150ルーメンが目安になると思います。
最低ルーメン値が意外と低いと思われるかもしれませんが、まったく灯りの無い暗闇では50ルーメンでも結構明るく感じますし、高出力になればなるほど点灯可能時間(ランタイム)は短くなるのでバランスを考える必要があります。
ただし、降雨量が30ミリを超えるような集中豪雨になると500ルーメンのライトでも用をなさなくなるので、夜になる前に早めに避難するように心懸けましょう。
※各照射サンプル画像は、光源(ライト)から白線までが約3~4mです。
※足元など至近距離の照射サンプル。
4.素材は?
運搬時や装着時の負担軽減を考えると軽量であるのが理想かと思います。
ライト本体の素材は樹脂製かアルミ製のものが多いのですが、いうまでもなく軽量なのは樹脂製の方です。
高出力製品になると放熱面でアルミ製が有利となりますが、重量的には不利となります。
低出力であれば発熱量も限定的なので樹脂製ヘッドライトでもまったく問題ありません。
樹脂製のヘッドライトでも防水性能レベルがIPX6(耐水形)をクリアしている製品もあるので、出来るだけ防水性能の高い製品を選ぶのが良いと思います。
5.その他
以前はハンドライトよりもヘッドライト製品の方が価格が高く、それが普及の足枷にもなっていたのですが、ここ何年かで随分と購入しやすい価格にまで下がってきました。
注意したいのは、3灯とか4灯を備えた廉価なヘッドライトライトで、『明るさ:5,000ルーメン!』 とか(実際には1,000ルーメンにも届かない)、無茶な数値を謳っている製品を防災・減災用として購入するのは控えるのが賢明です。
つい、安くて明るいほうに目移りしがちですが、性能を誇張している時点で製品の信頼性にも疑問符がつきますし、多灯故に大きくて重く、複数本のLi-ion充電池を使う製品が大多数なので、注意して取り扱わないと電池の破裂、発火を招くことがあります。
派手な宣伝文句に踊らされず、信頼の於ける堅実なメーカー品を選ぶように心懸けてください。
あと、既に単四・単三乾電池を使うハンドライトを所有しているのならば、ハンドライトをセット可能なヘッドバンドが単体で販売されているので、取り敢えず間に合わせるのも良いと思います。
ただし、使用電池の本数が1本のハンドライトでないと、重さで頭からバンド全体がズレたり、ライトを保持するループ部分の幅が狭いと、ライトが傾いてしまいます。また、ライト本体にポケットクリップが着いていないと簡単にスッポ抜けたりするので、所有するライトが合うかどうかは、実際にセットしてみるまで判らない…という、意外な落とし穴があるので注意して下さい。
少し特殊で高価になりますが、ライト部分だけを外してウェアラブルなタスクライトとしても使える便利な製品もあるので、自分一人だけが使うのであればこうした製品を普段から携行するのもアリだと思います。
・OLIGHT H1 NOVA / CREE XM-L2 (CW) – roomX.jp
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Facebook内にあるGENTOS社公式ページ、2018年2月23日のエントリー【今日は何の日?ライトとの意外な関わり】の中で、妊婦さんとヘッドライトについて書かれていますが、凄く参考になると思うので一読をオススメします。
・Facebook GENTOS社公式ページ – Facebook
最後に
どんな防災グッズにも言えることですが、購入した事で安心してしまい取扱説明書を読むこともなく、そのまま保管している・・・なんて事があるかもしれません。各ツールの性能や使用方法を熟知しておく事、使用期限のチェックなどは、平時にこそ準備しておくべきです。
大事に大事に保管するよりも、事ある度に使ってみて、使った分は必ず補充・・・というのを日頃から繰り返すのが理想だと思います。
ヘッドライトについてもやはり同じで、防災用として保管するよりも日頃から手元の補助照明として、どんどん活用して欲しいと思います。
使い慣れればヘッドライトの本当の便利さが実感できますし、決して特別なモノではないというのも判ると思います。その上で性能などに不満や不安を感じたならば、更に上位製品を買い足していくのが良いと思います。
阪神大震災以降、両手が自由に使えるリュックサックやバックパックが見直されたのと同様に、ヘッドランプがもっと一般に普及すれば良いと思う今日この頃です。。。