西暦の付いたモデルは、次年を先取りするのが慣例(?)になっていますが、多分に漏れずこの TK35UE も2018年モデルとなっています。
FENIX社のTKシリーズはタクティカル色の強いモデルが多いのですが、TK35UE-2018 もフォワードクリック式のリアスイッチを採用して間欠点灯を可能としています。
先代の TK35UE-2015 はMax:2000ルメーンでしたが、2018モデルは、一気にMax:3200ルーメンまでUPしています。
出力だけでなく、当たり前になりつつある充電機能が追加され、モード変更のスイッチも2015版から大きく変わっています。
来年の事を言うと鬼が笑う・・・と申しますが、2017年も残り1ヶ月を切った処で、FENIX TK35UE 2018 edition (以下、TK35UE-2018)のレビューをお届けします。
※今回レビューに使用した TK35UE-2018 は、Global Review Program の為に用意された個体なので、もしかしたら量産製品版とは微妙に仕様が異なる可能性がありますので予めご了承願います。
製品HP
・FENIX Official HP (FENIX)
・FENIX TK35UE-2018 / XHP70 3200 Lumen (FENIX)
・HOLKIN FENIX Store (HOLKIN)
INDEX
パッケージ
紙製の化粧箱には主要諸元がプリントされていますが、ランタイムなど、細かな特徴まで記載されています。
付属品
本体と18650電池以外は、付属のホルスターの中にパッキングされています。
ランヤード、多言語マニュアル(日本語未対応)、USBケーブル、予備Oリング、保証書、カタログが付属します。(※電池は本体に内蔵)
ホルスター/ランヤード
本体装備重量がそれなりにありますが、ランヤードのリードが太いので安心です。
ホルスターはベゼルアップで収納するようになっています。
ポケット部分に緩衝材などは無く、ホルスターとして必要最低限の構造・機能ですが、ホルスターが付属するのは有難いです。
ヘッド部分をベルクロで固定してもライトが取り出せるので使い勝手は良いのですが、欲を言えばガラスフィルターをカバーできるようにフラップがあれば、より安心して持ち運べると思います。
電池ケース
本体に18650をセットした状態で出荷される製品は多いのですが、電池ケースまで付属して来たのは TK35UE-2018 が初めてです。(※製品版で付属するかは不明)
2本1組で使うなら2本収納可能な電池ケースの方が使い勝手が良いのですが、この電池ケースは横にどんどん連結していく事が可能なので実に便利です。
仕様/サイズ
18650電池を2本2列直列にしているので幅は広くなっています。
電池込みの装備重量は約380gですが、Max:3200ルーメンの出力を考えれば妥当な重量かと思います。
ボディ
TK35シリーズは、アルミ鋳物では無くCNCの削り出し加工ですが、細部まで丁寧に加工されていて、時間(コスト)が掛かるだろうな…と、つい想像してしまいました。
HA3塗装も美しく、各部の面取り加工も含めて、FENIXらしいクオリティの高い製品に仕上がっています。
ユニークな外観のTK35ですが、逆手で握ってみると滑り止め部分と指の関節がフィットするので、握り辛いとは感じません。
ただ、親指を使ってスイッチを操作する時は、残りの指4本でグリップを掴む事になるので、やや不安定な感じがします。人差し指でセレクタを操作してON/OFFやモード変更が可能ですが、ヘッド側にボリュームがあるので、片手で操作する事が多いならば、落下防止の為に付属のランヤードを装着する事をお薦めします、
ヘッド/LED
先代の TK35UE-2015 は、CREE MT-G2 を搭載していますが、TK35UE-2018 は XHP70 となっています。
元々、TK35シリーズは、18650の2セル仕様であるが故に高VfのLEDとの相性が良く、MT-G2 の次に XHP70 を搭載するのも自然な流れなのかもしれません。
スイッチ
従来のTK35から大きく変わっているのがスイッチです。
これまでは、メインとモード切替用のプッシュ式2スイッチでしたが、TK35UE-2018 はメインがフォワードクリック式のプッシュスイッチ、モードセレクトダイヤルとダイヤルの中心部が照度変更のサブスイッチで、セレクトダイアルも含めると全部で3つのスイッチで構成されている事になります。
テール部分の広いスペースを上手く活かして、セレクトダイヤルも大きく造られ、片手で握ったまま2つのスイッチが操作できます。
また、セレクトダイヤルによってモード区分が明確に別れ、視覚的にも優れているのでので、多モード式のライトに慣れていなくとも直感的に操作できます。(※詳細後述)
電池
TK35UE-2018 の電池は、3.6V/3.7Vの18650×2本の他に、3.0VのCR123A×4本でも動作します。
但し、取扱説明書に記述がある通り、通常は付属の18650×2で運用し、CR123Aは緊急時のみの使用に限定すべきかと思います。(※3.7Vの16340×4本は使用不可)
また、ハイドレイン非対応の18650でも一応動作しますが、大電流が必要となるTurboモードなどで動作が不安定になる可能性があります。
電池はホルダー式で、ヘッドパーツを外して電池ホルダーを取り出します。
ヘッド側の接点にはスプリングが仕込まれているので、軽いチカラでヘッドが脱着できます。
電池ホルダーをセットしてヘッドを取付けるだけで接点同士が接触するので、ヘッドを緩めての物理的ロックアウトは不可となります。
ホルダーのリア側に小さなタクトスイッチが見えますが、このスイッチはダイヤル中央のサブスイッチと連動しています。
あくまで推測ですが、制御回路の一部が電池ホルダー部分にも存在すると考えられるので、わざわざ電池ホルダーを水に沈めるヒトはいないと思いますが、電池ホルダーの水濡れについては神経質なぐらいで丁度良いかと思います、
付属の18650は、容量が3500mAhのハイドレイン対応仕様、プロテクト付きで、型番は ARB-L18-3500 になります。
電池ホルダーはセットする向きが決まっていて、電池ホルダーの凹凸とリア側の凹凸を合わせないとセットできないようになっています。セットする方向が決まっているので暗闇の中での電池交換がやや面倒かもしれませんが、電池ホルダーが納まらなければ挿し直せば良いだけなので手間は掛かりません。
電池残量インジケーター
セレクトダイヤル/照度変更スイッチの中心部にインジケーターがありますが、メインスイッチをONにして連続点灯を開始すると、約3秒間、電池残量に応じて【緑】と【赤】でインジケーターが点灯します。
2色2種類の発光パターンによって4段階のレベルで電池残量を確認することができます。
・【Green】— 常時点灯(満充電状態)
・【Green】— 点滅(残量充分)
・【Red】— 常時点灯(残量少)
・【Red】— 点滅(残量かなりヤバイ)
低電圧警告
電池残量インジケーターでも残量は確認できますが、電池電圧が下がってくると【Turbo】や【Hi】で点灯中にインジケーターが【赤】点滅し続け、電池残量が下がっていることを知らせてくれます。
【Turbo】や【Hi】では電力消費が大きいので、照度を下げて点灯を継続するように警告してくれるワケですが、常時【赤】点滅するようになると【Turbo】や【Hi】で点灯できなくなる事があります。(故障ではないので慌てないでください…)
充電
充電機能を持つ製品は、外殻に充電ポートを備えている製品が圧倒的に多いのですが、TK35UE-2018 は電池ホルダーにUSBポートが設けられています。
本体に電池ホルダーをセットしたままの充電は不可なので、充電中はライトが使用出来ず、充電する度に電池ホルダーを取り出す必要があります。
この充電仕様については、ユーザーの設備(対応電池の所有本数や充電器の有無)によって評価が別れそうですが、ホルダーを取り出さなくとも充電が可能な構造なのが理想かと思います。
充電ポートの横にインジケーターを備えており、充電が完了すると【Green】で点灯します。
モード
・Lockout-mode
・Outdoor-mode
・Tactical-mode
TK35UE-2018 の動作区分(動作モード)は、上記の3つに大別され、セレクトダイヤルによって動作を切り替えます。
Lockout-mode
前述の通り、TK35UE-2018 はヘッドを緩めて物理的に通電がカットできません。
セレクタを Lockout-mode にセットすると、メインスイッチを半押し/全押しに関係無く【ON】にしてもライトは点灯せず、誤点灯を防ぐことが可能となっています。
Lockout-mode にしたままメインスイッチを【ON】にすると、セレクタ部分のインジケーターが常時点灯し、現在ロックアウト状態であることを知らせてくれます。
Lockout-mode でメインスイッチを【ON】にして、そのままセレクタを Outdoor-mode にすると、前回消灯時のレベルで点灯を開始します。
Lockout-mode でメインスイッチを【ON】にして、そのままセレクタを Tactical-mode にすると、Tactical-mode の【Turbo】2,000ルーメンで点灯を開始します。
Outdoor-mode
Outdoor-mode では最小の【ECO】から【Turbo】の3,200ルーメンまで、5段階で照度調整が可能です。
セレクタを真ん中のアイコンに合わせてメインスイッチを【ON】にすると前回消灯時の照度で点灯を開始し、メインスイッチを半押しにすると記憶されたモードで間欠点灯させる事ができます。
照度の切り替えは、連続点灯中にダイヤル中央部のサブスイッチをクリックします。
クリックする度に【Eco】→【Low】→【Med】→【Hi】→【Turbo】→【Eco】…のサイクルでモードが切り替わります。(※PWM制御ではないので低照度でもフリッカーは発生しません)
連続点灯中にサブスイッチを長押しすると【Strobe】が発動し、【Strobe】状態で更にサブスイッチをクリックすると【SOS】に切り替わります。※【Strobe】は一定の間隔で変調するポリスタイプのストロボです
【Strobe】と【SOS】はサブスイッチをクリックする度に相互に切り替わり、どちらの状態でもサブスイッチを長押しすると直前まで使用していたモードに復帰します。
Outdoor-mode で点灯中にセレクタを切り替えても、Lockout と Tactical、それぞれの動作に切り替わります。
Tactical-mode
Tactical-mode は【Turbo】専用のモードであり、半押し/全押しに関係無く、常に2,000ルーメンで点灯します。(半押しなら間欠点灯)
先の2つのモードと同様に、Tactical-mode で点灯中にセレクタを切り替えても、Lockout と Outdoor-mode、それぞれの動作に切り替わります。
セレクタが Lockout-mode になっていなければ、消灯時でもサブスイッチを長押しすると、サブスイッチを押している間だけ【Strobe】で点灯します。(平たく言えば、ストロボのみの間欠点灯になります)
過熱防止機構を内蔵し、65℃以上になると自動的に出力を下げてLEDを保護してくれます。
なんだか文章にすると複雑そうですが、セレクタやサブスイッチと半押し/全押しを上手く組み合わせてあるので、実際に操作してみると非常に簡単です。
インジケーターが点灯する分だけ電力を消費してしまいますが、メインスイッチを【ON】にしたままセレクタを Lockout-mode にして、必要に応じてセレクタを切り替えて連続点灯させる事も可能なのは、なかなか面白くて便利だと感じました。
照射
屋外照射
白昼(立木まで67m)
FENIX TK35UE-2018
TK35UE-2018 : All-mode
OLIGHT R50 Pro SEEKER
ThorFire S70
LUMINTOP SD75 / Hi: 4,000 Lm
同じXHP70搭載機でも大型のヘッドを持つThrow系製品の S70 と SD75 を直接比較するのは適当ではないのですが、配光の変化を見ていただければと思います。TK35UE-2018 の配光はミドルサイズのヘッドらしい配光で、S70 と R50 Pro のちょうど中間…という感じです。
光色については、他機種と同様に自然な白色光です。(※WB設定は太陽光)
若干、TK35UE-2018 の色温度が高いようにも感じますが、LEDの個体差かもしれません。
TK35UE-2018 は、どちらかと言えば拡散系の部類になるかと思いますが、スポット光も存在するので拡散配光でもある程度の距離があっても対象を捉えやすいかと思います。
まとめ
他メーカーからも18650の2列直列仕様製品はリリースされていますが、FENIX TK35 は、同スタイルの製品の中でも先駆け的存在で、自分の知る限り5年以上前から販売されており、過去には形がソックリなノーブランドのクローン機も存在していました。
バージョンアップを重ね、幾つかのバリエーション・モデルが存在するTK35ですが、フォワードクリック式のスイッチや基本スタイルは、初代から殆ど変わっておらず、非常に息の長い製品のひとつかと思います。
正直、最初は逆手で持った状態でリアスイッチを操作するのは、単セル仕様のライトに慣れている所為か違和感がありましたが、セレクタダイヤルでON/OFFやモード変更することも可能と判ってからは、逆手持ちもそれほど気にならなくなりました、(※親指でメインスイッチ操作、人差し指でダイヤル操作がオススメ♪)
片手で全ての操作を行う事が可能なようにUIが工夫されているので当然ではありますが、テール部分のスペースを上手く活かしたスイッチ配列・構成になっているので、馴れてしまうと違和感は感じなくなると思いますし、人によっては扱いやすく感じるかもしれません。
グリップ形状からするとフロントサイドスイッチの方が相性が良いとは思いますが、【TK】シリーズであることを主張するかの如くリアスイッチに拘るあたりがFENIXらしくて自分は好きです♪
人によって好き嫌いがハッキリと分かれそうなデザインですが、変化の激しいフラッシュライト製品の中でも古参の部類に入るモデルですし、それだけ多くの人の支持を得ている・・・とも考えられます。
TK35UE-2018 に限らず、TK35シリーズのヘッド径やリフの深さを活かし XHP35-Hi を組み合わせて遠射系のバリエーションモデルをリリースしても面白いかもしれませんね。。。(※それこそ鬼が笑うってモンですな…)
単セルではランタイムや出力が心許ないが、4セルだと重いし大袈裟過ぎる…2セルぐらいが丁度良さげだが、全長が長くなると持ち運びが不便・・・TK35UE-2018 は、そんなニーズに応える(応えてきた)製品なのかもしれません。
いずれにしろ、個性的な外観とは裏腹に、操作しやすく扱いやすい製品に仕上がっているので、正式販売の開始が楽しみなライトです。