被写界深度テスト / Test of ”Depth of field”

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実際に写真を撮る時には、小難しい【理論】より【感性】の方が大切だと思うのですが、F値と被写界深度の関係を頭では理解しているつもりでも、距離やF値による撮影画像の違いをじっくりと比較した事が無かったので、今回自分で撮影して検証・確認してみました。

◆Link:写界深度(Wikipedia)

レイアウト

今回の被写体(eneloop)とカメラ(EOS 20D + EF-S 60mm f2.8 Macro)の位置関係は下図の通りです。

DoF Test / Camera Layout

カメラ設定は、ISO:200、撮影モード:AF/絞り優先(Av/P)、WB:Auto、焦点距離 60mm(Exif情報) 固定です。

撮影は中央の eneloop(C) にピントを合わせ、段階的にF値を上げて(絞って)撮影し、左右の eneloop(L.R) にピントが合う範囲を計算値と比較します。また、F値が小さい場合の被写界深度は浅いので、被写体である eneloop(C) の本体表面と電極(+)部分とのピント状態を調べました。

F値と被写界深度、他との関係

F値 光量 絞り操作 被写界深度 Tv
(シャッター速度)
小さい
多い
(明るい)
開く
浅い
速くなる
(できる)
大きい
少ない
(暗い)
閉じる
深い
遅くなる
(できる)

F値、ピント範囲、被写界深度

F値 ピント範囲 (mm) 被写界深度 (mm)
F2.8
496~504
9
F4
494~506
12
F5.6
492~509
17
F8
488~513
25
F11
484~517
34
F16
477~526
49
F22
468~536
68
F32
455~554
99

※数値は【被写界深度の計算 ~各種カメラ・フィルム・レンズによる被写界深度の違いを一覧表で比較~】で算出された値を参考にさせて頂きました。(単位をmmに換算)

F値の変化(f2.8~f32)による被写界深度の違い【GIF動画】

F値による被写界深度の変化

F値が大きくなるに伴い、左右の被写体(eneloop)のロゴがハッキリと見えてきます。同時にシャッタースピード(Tv)が遅くなっていくのが確認できます。

f2.8 ~ f32 静止画(※クリックで拡大)

f2.8
f3.2
f3.5
f4.0
f4.5
f5.0
f5.6
f6.3
f7.1
f8.0
f9.0
f10
f11
f13
f14
f16
f18
f20
f22
f25
f29
f32

計算値によると f2.8 での被写界深度は約9mmなので、当然ながら前後 50mm に位置する左右の被写体(エネループ)には全くピントが合っていません。

計算上は f32 の 99mm 付近で3本共にピントが合うはずですが・・・。

画像が小さくて判り辛いのですが、実寸のRAW画像を見ると、明らかに f11 や f22 より f32 の方が中央、左右の被写体ともにピントが合って見えますし、オマケにレンズに付着したゴミまで見えて来ますw。(ピントは合って来ますが、光の回折現象(後述)により画質がどんどん落ちている事も確認できます)

被写界深度の検証(※クリックで拡大)

DoF Test / Camera Layout2

計算値での被写界深度は f2.8 で 9mm、f4 で 12mm、f5.6 で 17mm となり、今回の被写体である中央の単三乾電池の本体表面にピントが合っていれば、被写体の中心(13.8÷2 = 半径6.9mm)を超えた辺りで、理論上は電極(+)部分、および乾電池本体の輪郭がはっきりと見えるはずです。

f2.8 zoom
f4.0 zoom
f5.0 zoom
f5.6 zoom

実際に拡大してみると f2.8・f4.0 では電極部分、電池本体の輪郭ともにボケており、f5.0・f5.6 で双方の輪郭が鮮明に見えてきます。

今回、単純に被写界深度を 2 で割って前後 4.5mm などとしていますが、実際にはそれほど単純では無いと思いますし、レンズ性能(解像度)、焦点距離、被写体との距離やデジカメ本体の性能にも左右されて撮影結果も変わってくると思います。

参考サイトにも『マクロ撮影の場合は誤差が大きくなる』とありますが、それを考慮に入れても今回は計算値とほぼ合致した結果が得られました。

光の回折現象

F値が大きくなる(暗くなる)に伴い、適正露出を得るためにシャッター速度(Tv = Time Value)が遅くなっていきます。また、回折現象が顕著になり、画質が落ちていくと言われます。

検証した結果が下の画像です。(※クリックで拡大)

f2.8 zoom
f5.6 zoom
f11 zoom
f32 zoom

f2.8、f5.6、f11、f32 で撮影した4枚の元画像から同じ部分をトリミングし比較していますが、ピントが合っているにも関わらず、f32 の画質がかなり低下しピンボケ状態(小絞りボケ)になっている事が見て取れます。

実際の撮影に於いて自分は f32 まで絞る事は先ず無いのですが、実際に試してみてここまで画質が低下するとは正直思っていませんでした・・・。

ただ、以前にも述べましたが、WEBに載せる画像が小さい場合や詳細画像以外では画質低下に神経質になる必要は全く無いと思いますし、今回はこうした現象を『ただ自分の目で確かめたかった』という点を付け加えておきます。
 
 
◆◆◆

お恥ずかしい話ですが、写真を撮り始めの頃、自分は光量と焦点を混同していて『F値が小さい(明るい)ならピントの合う範囲も広いんじゃないの?なんでボケるの?』と思っていました。(^^;

写真関連の本やサイトを見て光量と焦点は別物、他にも過焦点距離や許容錯乱円などの要素で被写界深度が決まると知ったのですが、今回自分で確かめてみて少しだけ【光学】を身近に感じる事が出来ました。
 

カテゴリー: カメラ, 写真 タグ: パーマリンク

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